日の丸ニッポンの政策的失敗

岸田首相がG7及びインドなどを含めた招待国への訪問などを行い存在感を強めている。そのせいもあってか支持率を上げている。

本当に岸田首相が行っている行動が日本の私たち市民に有意義な活動なのか?

G7サミットにおける多様な検討議題が、世界を含めた有益な議論になっているかも含め、少しだけ確認してみたい。

広島で行われることで、もちろん唯一の原爆の被爆国として核兵器不使用の歩みを半歩でも進められることが期待される。それは、原爆の被害があまりに非人道的な事態や結果を残す事の実相を各国指導者に知ってもらう事が可能だからという側面がある。

では、広島の原爆投下から私たち日本政府がこの惨劇を繰り返さないように各国の指導者をこれまで広島に招き外交交渉として熱意をもってNPT核不拡散条約や核兵器禁止条約を推進してきたか?

オバマ元米国大統領は、当事国としてようやく慰霊に来た。が、日本政府が長年にわたり世界各国にその使命を果たして来なかった。ましてやG7サミット広島で開催して核兵器禁止条約に日本は未だに批准していない。さらに締約国会議すら参加しない。

議長国として、LGBTについても体裁づくりのための時代錯誤の法整備をG7サミット前に取り繕うよう国会で進めている。ではなぜ広島サミットの最大の主訴である反核についての国内の合意形成をしないのか?核兵器禁止条約の批准をするべきではないか?批准無しに軍事大国化の道を爆速し非核の訴えに説得力があるとは思えない。G7各国は条約拒否しており、外相会合では言及すらされていないのも当然の帰結だ。

科学技術会合では、科学技術を戦争に用いることを画策する人に占有させてはならない事を合意したようです。では日本政府はこれまでどう対応してきたのか?学術会議の中立性は、戦前の戦争加担してきた科学技術のあり方についての反省から、政府からも一定程度の独立性を確保すべく位置付けられた。が、安倍、菅首相に於いてその反動的政策として任命拒否となって今に至る。

地球温暖化、環境破壊に関する検討でも特徴的政策がある。原発推進の政策決定だ。

日本は、福島第一原発での世界でも稀に見る重大な事故を引き起こした国であるにも関わらず、何の反省もなくいきなり岸田首相方針で原発再稼働や新設など全力で原発推進国に変貌した。東日本大震災という予期せぬ事態や津波という不測の事態による天災であったのか?事実は、人災であった。経済産業省にある原子力規制当局である原子力安全保安院の官僚たちは、東京電力が想定していた津波の高さと敷地の高さがほぼ同じで津波に対しては日本最弱の原発であった(明石昇二郎氏 週刊金曜日3/10号)。規制委の2007年資料にも唯一の津波検討対象サイトだとされていた、にもかかわらず国民に開示せず、巨大津波電源喪失が予期される事も知っていた。が、その当時推進していたプルサーマル計画を3号機で実施予定であった為、放置し 揺れ についてのみ審議し安全が確保されるとお墨付きを出し、巨大津波に襲われた。

あれから私たち日本は、原発による電源確保無くとも経済を回せる事が実証できた。また、コストも天然ガスの高騰に対応する為とする理由付けをしているが、原発コストはその安全性確保の為更に高騰し原発の稼働が電気料金の値下げに寄与しない。

今、またあの官僚たちが何ら処分もされず生き残り、原発のリスクに知見の低い岸田首相を操り再稼働、延長、新設と話しを進めている。原発はもはや経済的優位性は無く最終処分も出来ず後世に多大な負荷をかけることになる。また、ミサイル攻撃による攻撃目標になり得る事はウクライナで明らかになった。無理すぎる理由で福島の経験も活かさず原発推進にひた走る岸田政権にまともな政権運営ができるとは考えられない。

半導体事業において日本は1980年〜90年代世界有数の能力を持っていた。が、今はメモリーは韓国にファウンドリーは台湾にその座を明け渡した。日の丸ニッポン政策でメモリーエルピーダルネサスに税金を注ぎ込み支援したが全て失敗した。また、大規模なロジック半導体(SOC)への注力をしたが、すでに破綻している。

そして今TSMCの工事を誘致し政府は日本の半導体事業の巨大拠点化を図ろうとしている。他方、日本政府として日の丸ニッポン半導体工場を更に経産省が主導し次世代ファインピッチである2nmを目指すという。

なぜ日本はメモリーを含めた半導体事業で世界市場から脱落したのか?

日立製作所半導体事業をされており現在半導体事業コンサルタントをされている湯之上 隆氏が明快な説明を衆院での意見陳述でされていた。

日本は当初、メインフレーム(汎用大型コンピュータ)用の開発をし、耐久性も高耐久性を誇っていた。しかし、やがて市場はPCへ移っていく。耐久性も低く大量に安価な製品が求められていった。このあと日本は全敗していく。

経産省が各界の協力を引き出し税金投入しても結局破綻してしまった。

湯之上氏が指摘したのは、診断が間違った。過去の成功体験から日本は技術立国日本として間違った診断をし結果手当てを誤り破綻する。

最先端ファインピッチの2nmをまたまた経産省が大枚の税金投入して取り組むという。

湯之上氏は無理筋であると衆院の招聘された

科学技術・イノベーション推進特別委員会 で陳述している。基礎的技術を持たず40nmピッチレベルから一気に最先端ファインピッチ2nmを狙うのは無理だと。ピッチが上がる事によりハイレベルな技術者が多数確保が必要となり現在の我が国のレベルでは確保できない状況だと。

ただし、加工機械及び材料は日本製が無ければ成り立たないという。だから日本は製造技術や材料で最先端で生きていくべきと提案した。

しかし、この提言は政策に反映される事なく日本政府は泥沼の半導体事業に大枚の税金を注ぎ込み、また同じ失敗を繰り返していくだろうと。

私たち日本の政府は、いくつか見てきた中でも政策決定に多大な失敗を見ることができる。支持率が上がる今の状況は本当に政策が正しいと考え支持しているだろうか?私たち日本の市民が今一番必要なことはきちんと政策が正しいのか?批判的に精査し意思表示し抗議すべきは抗議すること。まさしく私たちが政府の動静をチェックしていく事が必要だと思う。

それこそが民主主義の基本中の基本だと思うからです。