三人姉妹(鳥の劇場)

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先日のおやすみに、鳥取市鹿野にある鳥の劇場の演劇『三人姉妹』を観てきました。

『三人姉妹』は、ロシアのチェーホフの作品で、みなさんもチェーホフは耳にしたことがあるかと思います。

私も、チェーホフは聞き覚えがあるものの初めて観る事となりました。

場面は、19世紀末の帝政ロシアからヨーロッパの近代市民社会へ移行への過渡期の貴族階級の三姉妹の住む地方都市の家となっています。

社会は、農奴に支えられた帝政ロシア専制体制から、帝国主義産業革命の嵐に巻き込まれ自由と資本主義社会への移行を余儀なくされた大変革を迎えています。職業軍人や貴族がその地位を失い、新興階級としての資本家が台頭してきます。

近代市民社会が形成されていく事で、自由や平等の価値観が求められ支配や貴族らの持つ社会福祉的要素は失われていきます。自由平等の傍ら自己中心的思考や自己実現を労働からいかに得て行くかという命題に困惑する市民社会がそこにはあったようです。

チェーホフは、貴族階級である三人姉妹がこの変革の嵐に翻弄される姿を描いていますが、実は私たち現代に生きる市民社会にも資本主義の弊害である格差や存在の不安や自己実現の困難性などを浮かび上がらせることとなり、いまだにたくさん上演されているようです。

が、実は上演前に演出の中島さんがプレトークチェーホフは難しい作品である事や鳥の劇場として上演するにあたり、もちろんオリジナリティが無ければならないことを話されます。で、実際の舞台はなんと!現代の高速バスのターミナルの待合室なのです。

全国的雪の中、バスは全便運休。閉塞感ややるせ無い感覚の中、そこにいた客がチェーホフを読み始めます。そしてなぜかお話は進んでいきます。

途中まで まったく理解できないお話しが進み、帰宅後にチェーホフを読み直ししなきゃ!と来たことを後悔する気持ちにもなりました。

が、お話しが進み終幕前に観劇した私たちが、現代においても混沌とした社会で舞台上の人と同じ困難と向き合っている事に気づかされます。

終幕前にその仕掛けにハッとする舞台でした。

高速バスのバスターミナルが舞台となっている意味がわかってきます。

 

上演後、アフタートークで、観劇した私たちと演出の中島さんが、やりとりするわけですが、先に質問した大学生の演劇部の学生さんたちは、二回目を観に来た。演出の意味を考える上で時代背景や意図を二回目でわかってきたと話しています。

チェーホフが用いた、主人公を中心に進むのとは対照的な群像劇という手法も一見最初わかりにくいかもしれませんが、沢山の織り込まれた仕掛けが終幕前に繋がって溢れ出す感覚は、中島さんの今を生きる私たちの苦悩を浮かび上がらせるオリジナリティ溢れる演出と共に感動のエンディングとなります。

ロシアのウクライナ侵攻と相まって、私たちがこの時代をどう生きるのか?が問われていると感じました。

劇中では、三人姉妹のセリフにこんなセリフが出てきます。

 それでも私たちはこの時代を生きていくんだよね。何年も経って、私たちが生きた時代を後の人達はどう思うんだろうねぇ‥

みなさんも、鳥の劇場の珍しいロング公演となっている『三人姉妹』を観に行かれてはいかがでしょうか?合わせて鹿野温泉の♨️とお蕎麦も美味しくどうぞ!