エスカレーション

岸田首相が、防衛3文書改訂を行い防衛費の激増を図ろうとしている。

 私たち日本が、再び戦争ー武力による紛争に突入していく大きな転換点に生きている。本当にこれでいいのか?

 

 この路線を敷いたのは元安倍晋三首相だ。その実行犯は安倍の首相秘書官をしていた元防衛省政策課長の島田和久である。週間金曜日の12月16日号に島田氏のインタビューが掲載されていた。

 

①現状認識

 NATOは、約30ヶ国でロシアと向き合っているが、日本はロシア、中国、北朝鮮と向き合っており同盟国は米国だけ。戦後米国の圧倒的な軍事力の傘の下抑制的防衛政策をとる事ができたが、米国の相対的軍事力の低下と3ヶ国の軍事的圧力は高まっている。との見方。

 軍事費の中国の拡大は間違いなく拡大をし意図した行動をとっている。また、日本には脅威は低下しているもののロシアの政策や北朝鮮の最近の行動は脅威が拡大していると言わざるを得ないと思う。しかし、この緊張の高まりの背景はどうなのか?東西冷戦下、米国の対共産圏の盾として、不沈空母とまで自ら言った中曽根を始めとして軍事的盾になろうとして緊張を高めたのは日本側であった。北朝鮮の最近のミサイル発射や核開発は、トランプにより更にエスカレートしたのではなかったか?一時は核開発施設を爆破するなど経済的支援を求めていたのに。中国と台湾の緊張を軍事的対立まで高めたのは米国による中国の経済的圧力に対し対抗手段として圧力をかけていった結果ではなかったか?

 いつも、軍事的圧力を高めて日本の軍備を拡大させようとしてきたのではなかったか?トランプが中国の経済的発展に伴い対立軸を作り軍事的圧力をかけるに至っていないか?中国の海洋進出に対する米国の軍事戦略に日本が前衛基地、つまり不沈空母化することを日本は選択してきていないのか?

全く戦争をしたくていかに緊張を高めるか考えていない防衛省の政策立案担当者としての見方がそこにある。

 

②外交努力の不足について

 外交と防衛は車の両軸 と言う。安倍が話したという『自由で開かれた国際秩序』を維持する為に紛争は法に基づき話し合いで解決すべきもの。また、また国家間で誤解を解く『信頼醸造』が必要だと言う。

 抑止力が有効になる為には、戦闘能力をもつ事と相手に認識させること。また、軍事行動を識別できる能力を持つ事で抑制する。尖閣諸島付近の中国潜水艦の自衛隊の認識能力を通告することで抑止力を発揮できると例を挙げた。

 

 話し合いで解決すべき、だが従わない国には無駄だと思わせる抑止力が必要だと言う。

 

この主張は、全て軍事的圧力による力を背景とした紛争解決の道筋しか示していないのではないか?軍事的対立を煽り緊張を高め、だから軍事力を上げて軍事的圧力を背景に『交渉』するしかない!と言っている。まさしく、戦争をやりたくて仕方がない防衛省の政策立案担当者だと思う。

 緊張を高めた3ヶ国は、ロシアや中国は隣国として経済的結びつきも強く友好的関係性をつくる事が必要だし、従来作ってきていたのではなかったか?資源や経済的取り引きが盛んに行われてきたし、安倍に至ってはプーチンと友好的関係性をもち大枚の税金を投入して外交的成果を得ようとしてきた。北朝鮮との関連でも国交の無い中小泉は訪問して拉致被害者の救済を図ったではなかったか?

 米国との関係性を重視して隣国に軍事的緊張を高める軍備を進めるのではなく、まさしく『信頼醸造』をすべく対岸貿易も含めた交流や軍事力解除の外交交渉をすべきではなかったか?まだ、遅くはないと思う。ここに至った経過の中で、積極的外交交渉を行なっていないのは明白。安倍が、菅が、岸田が外交交渉を取り組んできたのか?

 まったくもって 無い としか言えない。私たちの国の憲法は、国際紛争の解決手段として交戦を永久に放棄するのではなかったか?

 島田氏の意図は我が国の憲法の精神とは真逆の思想に依拠しているとしか思えない。これが、現在の防衛政策の転換のベースにあるかと思うと、ぞっとするし、何もしないで防衛力を上げるべきだとか言っていられない。と、私は思う。