汽水空港 モリテツヤさん

昨日、12月11日 書店 汽水空港店主のモリテツヤさんの講演を聴きました。

みなさんは、汽水空港という書店をご存知でしょうか? 講演の中味にもなるのですが、モリテツヤさんは千葉県幕張のご出身の36才で、汽水空港という書店を経営しておられる店主です。

 講演の開始から30分以上遅れて会場に入りました。彼はゆっくりと、ずいぶん言葉を選びながら話されています。高校生時代からバイトをされ自分の生き方を見つけられないまま学生時代を過ごしている話しの最中でした。

 社会に出る、選択を迫られる三年生になると、社会の矛盾が目についたようで、それを3歳の頃から社会に失望していた と、話されています。

 身近な興味から大学の講義が面白いと感じ、三年生の夏休み以降から代ゼミに通い大学進学をする事になったようです。

 青年期の多感な時代を感じるままに突き進んで社会に出るという決断しないといけない時期を大学進学によりモラトリアム=執行猶予します。

 そんな中で、図書館の面白さに熱中します。書架に並ぶ書籍が、ひとつひとつある人の考えを示していて、生身の人からこんなに簡単に考えを引き出す事は至難の業だけど本ならいとも簡単に知る事ができる。他の人の考えを知ることの大切さを感じ 本により多様な考えや人の思考を知ることができる事に感動されたようです。

 しかし、生きて行かなければならない事や、土に対する思いから援農を体験したりクリスチャン系の農業研修施設で海外 特に東南アジアの人と交流しながら農業を学んだようです。

 この体験の中で、フェアトレードの必要性や私たち日本人が普通に暮らす中で、フィリピンの人たちに経済的格差から安価な労働力として働かせて、安価な果実を輸入している。現地の人達は貧困に陥っていく過程に気づきます。私たちが何気なく食べている果物や野菜が、彼ら彼女達を苦しめている事が見えたようです。

 そして自分が本屋をすることで、社会に本屋がある事で社会の役に立てるーと真面目に思ったそうです。というのも個人経営の本屋なら来た人にある意味好きに書店の特徴を出し来た人に関わっていけると思ったからだそうです。

 そして、土地を借り畑を耕し食べる物を作りながら書店経営をしたいと考え、幕張のようなところでなく、土地をただ同然に借りられるところを探し放浪したそうです。

行き着いたところが、鳥取県中部の湯梨浜町の駅近く。古民家を再生すべくてをつけようとします。そこに壁塗り職人の親方が働かせてくれたそうです。生活費や改装費用の捻出だけでなく、改装する技術的指導も受けたと喜んだそうです。

そして開業。

この一連の体験も、自分に必要だったと彼は話します。

つまり、3歳から社会に絶望してきた。資本主義社会の中で、人が協力したり支え合うのではなく競争原理に突き動かされ、アンフェアなトレードにより利益を得ている。しかしその陰には、貧困に苦しむ人がいる。社会的に生きることで他の人から搾取したり搾取すること無しに生きていける道を歩むよう模倣しておられるようだった。

 講演後、質問の時間があった。彼は、専門用語を使わず、安易に理解し易い言葉を選びながら話されているようだった。

はじめにんげんギャートルズの頃だったら僕はエリートだったのに、こんな世の中に生まれたから放浪者みたいになっていると。

つまり、原始共産時代なら他の人と協力して自分達が食べる分だけ作って幸せに生きていけたのに、たくさん作って利益をより得ることを目指さざるを得ないこの時代に生まれたから、3歳の頃から社会に絶望していたと。

 また、誰かを裁きたくないし裁かれたくもないと。

誰かの利益追求の為に搾取される事もなく、自分も搾取されたくない。

やがて結婚され、お子さんにも恵まれたそうです。そのお子さんにすごくこんなにかわいいと感じたと。

それは、小さなお子さんが、人の策略や妬みや競争にさらされいない純真無垢な表情や仕草に、人の本質とは本来こうであるはずだ。と、確信されたのだと思います。

一見、無計画で、放浪者のような彼のこれまでの経験が、必要だったんだ!と彼は言います。

今まで書いた彼の講演内容は、マクロ経済学の資本の論理がわかりやすく織り込まれているかのような話しぶりで、専門用語を話さずひとつひとつ言葉を選びながら話される内容に、いつのまに引き込まれていました。

また、社会への働きかけ無しには意味を持たないと思うのですが、会場の聞いていたひとりの女性の質問にこう答えていました。話し合う場所をあちこちで作っていて、その話し合いには生活の困難を話し合う場所にしている。その話し合いでは、すぐに協力関係が出来上がっている、と。

講演後、会場の外で立ち話が出来たので少し話かけてみたところ、政治的な話から入ると分断はなかなか避けられない。が、お互いの生活の困難さから入ると、政治的差異の相手であっても共通理解が得られる、と話していた。

 妥協ではなく、生活者視点から共通理解をしながら問題解決を目指すやり方を取りたいと考えておられるようだった。

36歳にして、僕の思考に近く、より具体的に行動し実践されている事に驚きを感じた。

会場には、多様な人が聞き入っていた。お爺さんやお婆さんまで、惹きつける魅力が彼にはあった。

みなさんも、機会があれば、汽水空港店主のモリテツヤさんを尋ねてみてはいかがでしょうか?

人生に新しい価値観を見つけることが出来るかも知れません。