SDGsは、万能か?

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斎藤幸平さんの講演会を聞きに1月28日岡山県真庭市まで行って来ました。

斎藤幸平さんは、45万部を超えるベストセラーを記録した『人新世の資本論』の著者であり、今は東大大学院の准教授である経済思想史等の研究者です。

マスコミでもよく取り上げられ、対談等でも活動されている為、みなさんもご存知かと思います。

皆生温泉の海岸を歩いたり走ったりする中で、海辺に打ち上げられているプラスチックゴミや松林に投げ込まれているゴミを見て、ゴミ拾いを始めた私が、海洋汚染の問題から磯焼けの事や環境問題に意識が向いていったのはすでに書き記した通りです。

ゴミ拾いをする中で、私の姿を見ることで同じ様にゴミ拾いをされ始めた方々もあり何かが動き始めたと思います。しかし、際限なく打ち上げられるゴミや投げ込まれるゴミに、この先の私たちが住む環境が取り返しのつかない悪化に向かっているという不安と絶望感に襲われています。

海岸線沿いの道沿いの松林には、これらのゴミが散乱しその上に吹上られた砂や土が重なりゴミを取り込みます。まさしく、地層学的な『人新世』という概念でこの地層を後に見たとき、ゴミまみれの地層が発見されるのだと思います。

人間の愚かな行動により、美しい環境を持ち多様な生物が生きていた地球が破壊され、汚染された死の星となってしまった地球が見つかるのだと思います。地球温暖化の限界点であるターニングポイントの2030年が目前に迫る中、いまだに危機感溢れる行動を起こせない私たち。ただし、グレタ-トゥーンベリさんをはじめとした若い世代の人達の中にはSDG sに取り組んだり誠心誠意取り組んでいる姿を見る様になりました。

そんな中、SDG sは万能か?と挑発的な投げかけをし[SDG sはアヘンだ!]と斎藤幸平さんは投げかけています。

私のゴミ拾いも含めて、最近ではSDG sに対する取り組みはあちこちで取り組まれるようになり理解も進み始めたかと思います。が、斎藤さんは現在のSDG sの取り組みだけではダメだと喝破しています。

例えばマクドナルド。ハンバーガーを包む紙が森林破壊の原因となる紙でなく再生紙とかプラスチックストローの廃止やビニール袋の廃止!今すぐに取り組める事を取り組んだ活動が知られています。それはとても良いことで、賞賛に値することだと思います。しかし、大量生産大量消費を促しフードロスや牛肉に偏り飼料を大量に必要とすることからco2の大量排出の問題などの側面があります。

しかし、斎藤さんは、基本的にこの取り組みでマクドナルドのハンバーガー食べてれば解決できるレベルの問題では無いのだと話します。私たちの生きるこの社会は資本主義の考え方で物事が動いています。第一に利潤最大化を追求することが社会全体に隅々まで求められ、商品化され私たちの生活環境を支えている地球環境すら商品化し利益を得ようとすることが活動の最大の目的となる様求められる社会です。

この資本主義の考え方を変えること無しにSDG sを取り組んだから大丈夫だ!とはならないと熱く語っています。

環境問題だけでなく、格差の問題。貧困、グローバル化による全世界的開発から生み出されたコロナ感染も含め資本主義が生み出す不可避な問題が私たちの生活に大きなダメージを与えてきています。そしてそれが今破滅の道である事が見えてきています。しかしながら、商業主義的にSDG sに取り組んでいれば大丈夫かのような錯覚を与え更なる利潤追求の手段にしている事に斎藤さんは警鐘を鳴らしていました。

真庭市は、岡山県北部で鳥取県境の山間地です。

この山深い町で斎藤幸平氏の講演会を聞くとは思いませんでした。冒頭の市長の挨拶で、最後に話された言葉が印象的でした。いろんな意見があると思うが、斎藤さんの話しを聞いて私たちが意見を活発に交わしていく事が大切だと。

また、最後の質疑の中で、市議さんの発言もこの会を象徴する発言でした。内容は、テクノロジーでこれらの問題が解決できるのではないか?という意見があるがどう思うか?また、私たちの意志決定をAIに任せれば最適解を得られるのではないか?というものでした。市議さんの話には、私たち市民一人一人が今の資本主義が洗脳してきた利潤追求最大化を最大の社会目的とするパラダイムからの脱却という観点が抜け落ち、逆に資本主義の延命を図る観点での検討はどうか?という質問であったため、斎藤さんは技術的解決策を目指すという事だけになる立場を完全に批判すべきだと話していました。市議さんの質問が、まさに資本主義的考え方に取り込まれない!という警鐘を鳴らしている斎藤幸平さんの趣旨を引き出す質問となっていました。

また、近隣の町から来られた方から[斎藤幸平さんの様な人が政治家になれば良い]が、マルクスを勉強してきた人間としてはそう思うと"意見"されていました。まさしく市長が、いろいろな意見を交わし私たちが議論していく大切さを求めた冒頭の挨拶の最後の趣旨を改めて[主義主張にこだわる事なく私たち一人一人が主体的に取り組み議論しながら進めていく民主主義的考え方のプロセス]を大切にしなくてはならないと参加した一人一人に印象づける"質問"となりました。

真庭市は、市民大学講座として年に一度こうして講師を招き講座を開催しているそうです。市長や市民の皆さんの意識の高さに脱帽したのと同時に良き機会を与えてくださったことに感謝の気持ちでいっぱいになりました。